第17章 東京*
びしゃびしゃに全身が濡れてしまって
心配そうに黒尾さんが私にパーカーを羽織らせてくれる
申し訳なくて返そうとしたけどすぐに断られてしまって
チャックをしっかりと上まで閉めてくれた
「これは困ったね‥花澄、とりあえずこれも腰に巻いてて」
そう言うと今度は研磨が着ていたシャツを腰に巻いてくれた
『ええっ?!私は大丈夫だよっ‥2人が風邪引く方が困るっ‥』
「俺は花澄が風邪引く方が困るし、今の姿を他の男に見られる方がもっと嫌だ」
「研磨の言うとおり、俺もそっちの方が嫌だし?すでに注目浴びまくってるしね〜?」
よっぽど濡れている私が珍しかったのか気付けば周りの人達がこっちを見ていて
その人達から隠すように2人が立ってくれる
「そろそろ閉園だし、帰りますか!」
黒尾さんがそう言うと濡れて少し冷えた私の手を握って歩き出す
『はいっ!とっても楽しかったです!2人ともありがとうございました!』
楽しい音楽
キラキラと背中に感じる光に少し後ろ髪を引かれながらも
駅へ向かって歩き出した
「それにしてもこんなに濡れると思わなかったな‥花澄ちゃんの兄ちゃんもまだ仕事終わらないよな?」
一番遅い時間の新幹線で帰る予定だったのでまだお兄ちゃんからは連絡もきていなかった
『まだですけど大丈夫ですよ!私はどこかでお茶でもして待ちますので』
「それは却下!絶対ダメ!」
「俺もそれは絶対やめといた方がいいとおもう。誘拐されそうだし‥風邪ひいても困るし」
『誘拐?』
「花澄ちゃんが良かったら俺ん家来てくれたら助かるけど‥着替えも用意するし」
黒尾さんがはぐれないようにと電車の中で繋いだ手を少し引き寄せられる
『それは申し訳ないです‥』
「よし!じゃあ決まり!おにーさんに連絡だけしといてね?」
『えっ?!』
「こんな時くらい東京の俺たちに甘えて欲しいんですけど?」
ニヤリと笑う黒尾さんの顔が近くなる
『すみません‥助かりますっ‥』
「クロ、襲わないでよね?」
「頑張ります」
こうして私は黒尾さんのお家にお邪魔させてもらうことになった
水で濡れた身体が空調の風で冷えてきていたから本当はとってもありがたかった