第7章 青空と曇り空
「……?龍水君、普通に考えてみたまえ。私とゲン君が、現状の【策謀力】に長けた人材カードだ。その内、私の方が治世や統治の教育も受け、実際に司帝国でも宰相をしていたから残るのに向いている。今度のはあくまで石化の真相探し。軍師の私はお祓い箱だ。ゲン君が行けば策謀者は充分だよ。何より残留組を率いるリーダーが必要だ。その統治向きの人材カードが私しか居ない。これは君が復活する前から決まっていた事だ」
蒼音の台詞に、龍水の心が温度を無くし。
バターーーンッ!!!
「龍水!!おい、龍水!?……っ!!誰か!」
最も愛する女性と、また離れ離れになる。その現実が、龍水を押し潰した。
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「う…………」
うなされる中、龍水は夢を見た。見合いの日に見た蒼音の好きな物を語る煌めく瞳。手を伸ばそうとするが、届かない。蒼音の手前で見えない透明な壁に阻まれて。やがて、蒼音が背中を向けて去ってしまう。待て、待ってくれ。行くな、行くな……
「蒼音…………っ!!」
叫びながら目を開けると。そこには、心配そうな目で龍水の額に乗せた布巾を取り替える蒼音が居た。
「蒼音だが。どうした、龍水。悪い夢でも見たか」
「蒼音……ホンモノ、だよな?」
思わず龍水が、いつもは触るのを遠慮していた高嶺の花の頬や髪の毛をぺたぺたと触る。 好きなだけ触らせると、ふぅ、と蒼音が息を吐いた。
「ホンモノだ。龍水君、夢では無いぞ」
「……!!蒼音、無粋な真似をした…!貴様に、この様に無遠慮に触るなど……」
龍水らしからぬすっかり弱った姿に、いよいよ重症だな、と思った蒼音がベッドの上で腕組みしながら、こてんと首を傾げた。
「ねえ。私にそんなに船出組になって欲しいのか、龍水。私が『欲しい』のか?」
「…………!!」
その提案に、龍水は思わずそうだ、と返しかけるが。
ふい、とそっぽを向いた。
「……いや。地球の裏まで行こうという危険な航海だ。命の保証も出来ん。船長として船員の命は守る。だが、それとこれとは話が別だ。蒼音。確かに貴様は残留組向きなのだ。だから、待っていてくれ」
龍水が懇願する台詞を吐き、蒼音を見た。蒼音が大丈夫だと微笑む。