第7章 青空と曇り空
「凄いんだよ、何だか本当のお話みたいなんだよ……!」
「これ、最後はどうなるん!?」
スイカとミライが息を飲みつつ展開を見守る。
「百物語に、演技といった見た目もついた華やかな物だな」
金狼も真剣な表情で見ていた。他の生徒も、演劇という見た事の無い物、複数の役柄を演じ分ける蒼音の気迫に魅了された。
「兄さんには分からないんだわ!!私は……私を好きになった相手を殺してしまうのよ!?いいわよね、兄さんは。私と違って、こんな強い力も無いもの。ただ、人間が自分で死ぬ様に催眠術をかけるだけ。まだ、殺す相手を選べるんだもの…!」
切々と、自身の兄である死神に八つ当たりの様に強い死神故の苦悩を述べる蒼音は、まさしく哀しい運命を背負った存在だ。物語は終盤へ差し掛かる。世界を呪った茜は愛されなくてもいいからせめて青年の傍に居たいと沢山人を殺しては宝石にした。身に余りすぎる力を宿し破滅仕掛ける茜を、羽京演じる青年が助けに来る。茜の中から今にも溢れかける、彼女の能力関係無くどんな生者をも全て殺してしまう呪いを殺しに来るのだ。
「茜。大丈夫だよ。君は、悪くない」
優しく語りかける羽京だが、何処が?と茜は耳を貸さない。フードを握る手がガクガクと震える。
「違います…私は、生まれた時から悪者なんです。人を食らう事で生き長らえる。最初から、人間に憎まれて当然の存在なんです。悪なんです。今までも沢山人を殺したの、見たでしょう?もし、生まれ方を選べるなら。こんな風になんか、なりたくなかった……!」
涙をぽろぽろと流す蒼音に、生徒達は感情移入した。茜は確かに悪い事をしている。それでも、もし死神の茜の立場なら、さぞ辛いだろうと。
だが羽京演じる青年は、構わず彼女を命懸けで助ける。茜の暴走する力を唯一殺せる《聖人》である彼は自身の生命を代償に茜の巨大な力を殺し本当は君が好きだ、と話す。では何故宝石にならないの?と茜が目を丸くした。
「以前僕の目の前で人間を宝石にした時、君は『宝石になりなさい』って言ってた。君の能力には、発動する為の条件があるんだ。ひとつは、君に惚れる事。もうひとつは、」
君自身が宝石にする人間かどうか、無意識下で判断をしていた。だから僕は今まで生きていた。