第7章 青空と曇り空
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「じゃあ今日の授業はここまで……
と、言いたい所だが。みんなァ!喜びたまえ!今日から居残り特別授業がはっじまるよーー★」
ドンドンパフパフーー!!と体操のお兄さんさながらの雰囲気で叫ぶ蒼音に、生徒全員が「えっ……」とドン引きした。居残り?罰ゲームみたいだ。が、不安を取り除く様に蒼音が先回りして説明する。
「今みんなが習ってる文字や、計算とか生活に直接役立つ実用的なのを『実学』と呼ぶのだがね。今日から不定期で行う特別授業は、直接生活には役立ちはしない。だが、私の歌や漫画家の先生の作品然り。世界には『面白い』物があるだろう?生活に役立ちはしないが——それらは人の心を震わせる。
そういう物を学ぶのも立派な勉強だ。その為の居残り特別授業だ!参加は自由。帰っても残ってもどちらもOKだから、その辺は自分で決めたまえ」
「なら、残るんだよ〜!面白そうなんだよ!」
「ええなあ!私学校全然行かれへんかったから、こんな楽しそうな授業も初めてやわ〜」
「具体的には、何をやるんだ?」
目を輝かせる生徒の前で、蒼音か咳払いをした。
「今日の授業で見せるのは『演劇』だ。『役者』という演技者が、別の人格の人間を演じて、本物らしく見せる。百物語とはまた違った物語の見せ方をする【芸術】の一つだよ。今回は役者が少ないから私が複数兼任だがな。と言う訳で役者二人の入場だ!」
蒼音の一言で、羽京とルリまでが《特別授業》にやって来た。科学学園の講師揃い踏みである。小道具を箱に入れて持ってきた羽京が、苦笑いをしている。無理やり蒼音に参加させられたのだろう。ルリはにこやかに生徒達を見守りながら、持ってきた椅子に座った。
羽京が荷物から、蒼音に真っ黒いフード付きのローブと煌めく宝石箱の様な物を渡した。向かって右手にルリ。左手に台本を持った羽京が椅子に座る。オマケの授業でありながらその豪華絢爛さにわあっ!と生徒達から歓声が上がった。
一応授業だから、覚えた国語の平仮名で感想も後でカンタンに書いてもらうぞ!と蒼音が念押しする。が、皆帰る素振りは無い。課題より『面白そう』という興味の方が勝ったのだ。