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二人の航海者

第7章 青空と曇り空


龍水は復活後、フランソワと共に蒼音からチョコを貰った男性に【事情聴取】を行った。蒼音本人に突撃しようかとも思ったが。

『ん?何か問題あったかね、龍水君。あ、チョコが不味かったのか』等と上手く龍水を手のひらの上で転がして、この問題を忘れさせてしまうだろう。流石に龍水も学習したので敢えて回りくどい方法を取った。

結果。皆見た目は全く同じ物をだったが、中身に液体が入ったタイプは誰一人として貰ってなかった。龍水は調査結果の並べた紙を見ながら思案する。千空から『龍水テメー、下らない事に使ってんじゃねえ』と言われつつ、紙とインクを大量に購入した。

「フランソワ。少なくとも、蒼音は俺だけに凝った特別な物を渡したのは事実だ。WHYはこの際置いておこう。これは絶対に、絶対に!きっちりホワイトデーのお返しをする所だ!!違うか?」

龍水には蒼音の本音は分からない。なら潔く受け取った物に全力で応えようと腹を括った。はい龍水様。私もそう思います、と。悩む龍水をあたたかな眼差しでフランソワが見守っていた。

迎えた三月のホワイトデー当日。【本気の手作りには本気の手作りをあげるべきだ】と思った龍水。悩みつつも船作りが暗礁に乗り上げた時に作った自身の中でも最高傑作の機帆船の模型をあげようとしたが、

《気持ちだけ有難く頂くよ。そもそもが義理だし気にするな》と、断られてしまったのだ。あんな蒼音の象徴の塊の様なチョコレートを貰っておきながら、自分側が何もあげられないのは、なんだかおかしい。

《これ、凄く上手いし綺麗だね。でも私の部屋だと置き場所が無くてね。残念だが目に焼き付けておくよ》

と言われてそれも確かにそうだったので、『はっはーーーー!今度リベンジマッチしてやる!』と蒼音の褒め言葉に喜びつつバッシィィイン!!と指鳴らししまくった。

……のはいいが。当初の目的を果たし蒼音を喜ばせるどころか、更に蒼音に自分を喜ばせて貰ってしまった。これは流石に不平等過ぎる。自分ばかりが蒼音に与えられてしまうのだ。が、何を渡したらいいのかもさっぱり分からない。
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