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【呪術廻戦】撫子に口付けを【短編集】

第19章 【宿儺/コミュお題夢】氷霜の契り




宿儺は、振り返らずに言った。



「……次の満月の夜、さらに質の良い毒を用意しておけ」



逢瀬の約束にしては、甘さが無い。

その言葉は、命令であり期待。



嵐が去った後のような静寂が、庵を包む。



ゆめは乱れた衣を整え、自分の手を見つめた。

触れられた場所が、まだ熱い。

彼の体温が、まだ肌に残っている。


宿儺はいつか、ゆめをも踏み越えていくだろう。

嫌というほど、彼の性質を知っている。

誰のものでもなく、己のために生きる存在。

愛も、憎しみも、呪いの王の前では無意味。彼は、ただ在るだけで、全てを破壊する。


そして、彼女は日常に戻り、薬草を煎じ始める。

湯気の立つ鍋の中では、数種類の草根木皮が煮え、独特の香りを放っている。

毒と薬は紙一重。

その境を知り尽くした者だけが、命を救い、また奪うことができる。


「術式反転――白蓮浄化(びゃくれんじょうか)」



今度は、里の病人を救うための薬を作る。

昨夜、宿儺に捧げた毒とは正反対の、命を繋ぐ霊薬。

指先から垂れて湯薬に溶け込む液体は、意志によって毒にも薬にもなる。



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