第18章 【夏油/悲恋】偽り睡蓮花
夏油傑の血を引く子供。
呪術界にとって、それは脅威でもあり、呪霊操術を受け継ぐ可能性もあることを考えれば、利用価値のある存在でもあった。
五条悟の強硬な主張により、出産までは執行を延期することが決まった。
「あの子は、騙されていただけだ」
と、珍しく呪詛師を庇う五条の言葉に、上層部の一人は鼻で笑った。
「騙されていようと、自ら進んで人を殺したことに変わりはない。93人も、だ」
「……分かってますがね、未成年ですよ」
五条は、苦い表情で目を伏せる。
獄中でも明るさを失わないゆめの態度から、反省はなく、更生の余地はないと、呪術総監部は死刑を選択した。
「赤ちゃんに会えるの、楽しみです。夏油様に似てるかな?それとも私似かな?名前を考えたいから紙と鉛筆貸してくれませんか」
筆記用具をおねだりしながら看守に笑いかける彼女の笑顔は、あまりにも無邪気だった。
そして、誰も彼女に告げなかった。
出産の翌日、刑が執行される事実を。
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