第10章 ルーツを探しに出かけましょ
「あの…、お取り込み中すみません。」
ソウイチの声に、皆が一斉に注目する。
「妖刀を一度戻してもらえないでしょうか?」
そう言うソウイチも、後ろで目を伏せるシュカも表情は硬い。
その様子に少し戸惑いながらも白は頷きを返して、妖刀を差し出した。
シュカはそれを見て、益々顔を強張らせながらも恐る恐る手を伸ばす。
すると、ぶわりと冷気が吹き出し、シュカの手を阻む。
まるで彼女を拒んでいるかの様だ。
「…やっぱり…。」
驚く面々を他所に、シュカは手を引くと力無く肩を落とし、ソウイチはそんな彼女を慰める様に背中を優しく摩る。
「あの…どういうこと?さっきまで普通に持ってた…よね?」
エニシの言葉に俯くシュカに代わり、ソウイチが口を開く。
「その妖刀…銀雪花が主を選んだ、ということです。守り人は銀雪花が新たな主を見初めると、その役目を終えることになると伝えられていました。」
「…代々、守り人の役目は私達一族が受け継ぎ、守ってきました。誰にもその存在を知られない様にひっそりと…。」
ほろりとシュカの目から涙が溢れ落ちた。
「こんなに呆気なく、終わってしまうんですね…。」
誇りにしてきたのだろう。
刀を守る一族として、妖刀を受け継ぐ者として。
誇りに思っていた役目を、砂上の楼閣の如く、瞬く間に失ってしまったのだ。
「…これでいいんだよ、シュカ。銀雪花が広く世に知られてしまっては、もう私達の手には負えなかったんだ。」
「…妖刀は誰にも知られていないんじゃ…。」
シュカの震える声に、ソウイチは小さく首を振った。
「そう思っていたのは私達だけだ。奴らも銀雪花を知っていたからここをめちゃくちゃにした。この人達も奴らとは別に妖刀の存在を知っていたんだ。」
彼の言葉に、シュカは顔を覆った。
「…終わるべくして終わったのね…。」
「あぁ…。誇りに思おう。俺達は立派に役目を果たしたんだと。」
ソウイチの慰めにシュカは肩を振るわせながら何度も頷いた。