第10章 ルーツを探しに出かけましょ
「良かったね、白!」
そんなエニシを見て、白は困った様なそれでいて嬉しそうな笑顔を彼女に向ける。
「あなたには敵いませんね。」
「え、そこは”いい仕事しましたね”じゃなくて?」
白はそれを聞いて吹き出す。
自身の罪はよくよく理解している。
普通は到底和解など出来やしない。
追われる者は常に殺すか殺されるかの二択しかないからだ。
それを見逃すという”和解”に話を纏められる人を、白は他に知らない。
「ふふっ。確かに見事な手腕ですよ。」
「でしょ〜?褒めて褒めて〜。」
白は、優しくぽんぽんと彼女の頭を撫でると、メイ達の近くに歩み寄った。
「改めて、ありがとうございます。」
頭を下げようとした白を、メイが手で制す。
「いいわ。あなた達は今、波の国にいるの?」
「はい。海運業をやっていて、その地域の自治を担っています。」
「実質的な王、といったところですか?」
「はい。」
「…”暴君”ではないわよね?」
「いいえ。そんなことをしてしまえば、エニシさんとの約束を違えることになってしまいますから。」
白はにこりと笑いながらエニシを見ると、彼女はにっと笑う。
「斬不斬さんと白の潔白は私が証明しますよ。」
それを聞き、メイと長十郎は揃ってほっと息を吐く。