第10章 ルーツを探しに出かけましょ
「ゆっきー!?」
気づいたエニシが慌てて止めようとすると、ユリは彼女の方を振り向いてにこりと笑う。
そして、何かの印を組むと妖刀の柄に手を伸ばした。
「危ない!ゆっきー!」
悲鳴の様に叫び、ユリへと駆け寄ろうとするエニシをカカシが止めた。
「ちょっ…!先生!?」
「危ないのはお前だから。」
「いや、どう見てもゆっきーでしょ!」
「そう思うなら見守ってあげてよ。すぐに助けに入れる様に。」
氷に対抗できるのは火。
火遁の存在にエニシも思い至ったのだろう。
少し見開いた目に、ぐっと力が入る。
「先生ってば、初めから知ってましたね?」
「悪いな。ま、これも想定の内ってね。」
知っていた訳ではないが、万が一の最悪な事態に陥ってしまった状態だった。
「ゆっきーを当てにしたんですか?」
「あいつならこんな事態に対抗でき得るんじゃないかとは思ったな。」
「態々、波の国から呼び寄せて?」
「偶然の出会いだったんだよ。お前と同じでな。」
そんなやりとりをしている間に、ユリは柄を掴んだ。
すると、ユリと妖刀の間で力が拮抗し、冷たい風が逆巻く。
だが、カカシは不思議と不安には思わなかった。
それは確信へと変わる。
「ゆっきーのチャクラが…勝ってる…!」
ユリのチャクラが妖刀の力を呑み込む様に圧倒していく。
そして、完全に妖刀の力を抑え込むと、静寂に包まれた。
ユリは薄く笑うと、岩に覆われたドアをすっと見据えて音も立てずに走り出し、妖刀を岩の真ん中へ深々と突き刺した。
パキン!!バキバキバキ…
岩肌は完全に凍りつき、おそらく岩の向こう側も瞬間的に凍ったものと思われる。
禍々しい殺気がぱったりと止んだ。
「おっそろすぃ〜…。妖刀ってめっちゃ怖い代物だったんすね…。」
「え、今更…?」
呑気なエニシにカカシは半ば呆れ返る。
それでいいのか、元忍。