第10章 ルーツを探しに出かけましょ
その時、ぞわりと鳥肌が立つ様な殺気が流れ込んでくる。
すぐそこに、待ち構えているかの様な恐ろしい気配。
「…っ!?もしかしてドアのすぐ向こうに誰かいるんじゃ…!?」
「そんなっ…!」
ソウイチとシュカが恐慌状態に陥るほどに禍々しい気配だ。
「これはまた…。絶体絶命ってやつですか。」
いつも飄々としているエニシもさすがに苦笑いを浮かべる。
ここは全面壁に覆われた地下だ。
逃げ道は殺気の漏れ出す塞いだドアのみ。
「見事に袋の鼠だね。」
ここから脱出するには他に道を作るしかない。
こういったカラクリ部屋には抜け道の一つはありそうだが…。
「ソウイチさん、この部屋には抜け道が無いんですか?」
長十郎が問う。
「この部屋の存在は知ってはいましたが、詳しいことは守り人しか…。」
ソウイチが困った様にシュカを見ると、彼女は何かを堪える様に胸元でぐっと手を握っていた。
妖刀もぎゅっと抱え込まれている。
その時、妖刀から鋭い気と共に、冷気が吹き出した。
「つ、冷たい…!」
「シュカ!刀を離せ!」
ソウイチが彼女に駆け寄り、刀を抱えていた腕を広げて距離を取る。
すると、それを待っていたかの様に、妖刀は宙に浮いたまま益々冷気を迸らせる。
おそらくは、外にいる何者かの殺気に当てられたのだろう。
「凍る…!このままじゃ凍っちゃう…!」
エニシをはじめ、彼らは袖で口元を覆い、最早凍気と言えるほどの凄まじい気から離れて身を守る。
そんな中、一人の人物が立ち上がった。
そして、ゆっくりと妖刀へと近づいていく。