第10章 ルーツを探しに出かけましょ
「ん〜…別に必要性を感じないというかなんというか…。名刀なら興味あるんですけど。プレゼント用途で。」
誰にだ、と突っ込みそうになったところで、はた、と思い当たる。
「イタチか?」
小さな声で聞くと、少し驚いてから苦笑が返ってくる。
「まぁ…、刀好きそうだったんで。もう一度持たせてあげられたらなぁって。」
「もう一度、か…。」
うちは一族の死因の半分は刀傷。
つまりは、そういう事なのだろう。
あの事件がなければ…。いや、そもそもダンゾウと関わらなければ、二人は何事もなく里にいられただろう。
もう一度があれば…。
―もう一度、お前達が戻って来れたなら…。
「や〜だ、先生。しんみりする事じゃないですよ。チャンスをもう一度掴もうって話ですよ。」
「…違う気がするけど…。」
「細かいことは気にしな〜い。」
からからと笑うエニシに苦笑を返す。
「ほんと、お前は変わらないよ。」
「あれ、昔が恋しくなっちゃった感じ?」
にまにまと笑うエニシにしらっとした目を向ける。
「お気楽だなって。」
「うわ、バカにしやがりましたね。」
「してナイしてナイ。気のせいダヨ。」
「その棒読み感が肯定を物語っている。」
「そんなことないサ。」
「棒読みがデフォルトですか、ってなくらいには板についてますね。」
「ウルサイよー。」
「んじゃ、感情込めてください。」
「やだね。」
「ひどー。」
ひとしきり言い合ってから、二人して吹き出した。
「ふはっ。何か久々ですね、この感じ。」
「だな。」
エニシとの会話はテンポが良い。
小気味良い空気だ。
懐かしいと思うと同時に寂しいとも思う。
あの頃は当たり前にあった時間が、今や貴重な時間となった。
「ま、取り敢えずはここにいてよ。今はまだここを守る方がいいからさ。」
戦術としては、外に見張りがいた方がやりやすい。
エニシもそれが分かっているのだろう。
少し怪訝な顔で首を傾げたが、納得してくれた。