* 忍のハート ✿ 番外編 *【ONE PIECE】
第29章 ◆ 助けたい君 ◆ 夢主視点 ◆ ④ ◆
ウタ)「行けない」
ゆっくり答えられた言葉は
拒否の言葉だった
「⋯⋯」
分かってたけど
思わず手を強く握ってしまった
そんな私に気付かずウタちゃんは言葉を続けた
ウタ)「もう⋯家出、したくない、の⋯また家出したら、悲しむ家族がいるから」
そう言ったウタちゃんは
申し訳なさそうに笑っていたが
どこか嬉しそうにも見えた
ウタちゃんのその顔を見て
私は力が抜けた
「⋯そっか⋯そうだね⋯そうだよね。男の嫉妬って怖いよねぇ。分かる分かる。私の旦那も怖いもん」
ウタ)「ふふっ⋯私はここから⋯赤髪海賊団から⋯もう離れない、よ」
「それがいいよ⋯あーあ⋯美人さんに振られちゃった」
ウタ)「⋯ありがとう」
「ふふっ⋯ならこれは友人として」
ウタ)「友人?」
友人って言ったらウタちゃん驚いていた
友人って言っていいよね
あれ?
まぁ、いいや
「あなたの歌声は確かに人の心を救った。その人達に変わってお礼を⋯ありがとう。助けてくれて」
ウタ)「⋯それなら、もう⋯」
「直接言いたくて⋯友人からファンになったよ」
ウタ)「友人がいい」
「え?」
ウタ)「もぅ、ファンはいなくなるかもしれないけど⋯友人は⋯ルフィ以外の友達は、初めて、だから⋯」
「ふふっ、そっかぁ⋯ならこれも友人として⋯」
ウタちゃんの手を優しく取っておでこに持って行って
目をつぶった
祈るように
ウタちゃんは黙っていた
「あなたの逝く先に、導きあらん事を⋯」
ウタ)「⋯」
握っていた手を下ろして
ウタちゃんと目を合わせ笑って見せた
「あなたの歌と心は生き続けるよ⋯絶対にね」
ウタ)「⋯ぅん」
「疲れたでしょ?ゆっくりおやすみ。ここにはあなたの友人も家族も⋯みんないるから」
ウタ)「⋯うん⋯ありが、とぅ⋯」
ウタちゃんは言い終わると同時にシャンクスへ倒れる体
そして掠れた声で⋯ゆっくりと歌い出した
最後の歌をずっと聞いていた
力尽きたのか次第に歌声が小さく消えていった