第37章 ゼロの
翌日、
「それってつまり、毛利さんのパソコンから現場のガス栓にアクセスした形跡が出たってこと?」
昨日と同様捜査会議が開かれたが、白鳥君からまさかの報告があった。
なんでも、家宅捜索の際押収した毛利さんのパソコンから、サミットの予定表や国際会議場の見取り図が出てきたらしい。
「あぁ、サイバー犯罪対策課からそう報告があったよ」
「決まりましたね」
そう言いながら、風見さんが立ち上がった。
「毛利小五郎は現場に忍び込み、格納庫の扉をあけ高圧ケーブルに細工をしたんです」
「待ってくれ!!だったら防犯カメラに毛利君が映っていたはずだ」
「あ、いえ。現場にネットが開通したのが昨日からなので…」
「そんな…」
現場映像が無いとなると、今回毛利さんのパソコンから出てきた物たちが重要度の高い証拠になってしまう。
「毛利さんは取り調べではなんと?」
「毛利小五郎は否認を続けている。
否認のままでも送検できるが」
「動機が分からんのに送検する気か!!」
「証拠が揃えば送検。警察官として当然のことです」
「待ってくれ!!何か引っかかる!!何かおかしい!!」
「何か引っかかる、何かおかしいで、これだけの捜査官が動くと思いますか」
目暮警部が勢いよく立ち上がり訴えるが、風見さんは取り合う気はさらさらないらしい。
悔しそうに唸る目暮警部を宥めて、着席してもらう。
残念だが、風見さんの言う通りだ。送検に足る証拠は十分に揃ってしまっている。こればっかりはどうすることもできない。
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捜査会議が終わった後、私は給湯室に行きインスタントコーヒーを淹れていた。
湯気が立つそれを片手に、1人で考える。
やはり、今回の爆発事件はどう考えても毛利さんがやったようには思えない。なんたって、動機が一切ないのだから。
だが、決定的な証拠は十分すぎるほど出てきてしまっている。現場での指紋から始まり、予定表や見取り図、さらには毛利さんのパソコンから現場のガス栓へアクセスした形跡までしっかり。だが、現場の防犯カメラ映像は無いときた。
偶然と呼ぶには些か都合が良すぎる。