第37章 ゼロの
そんなことを考えながらむくりと起き上がって再びパソコンと向き合うと、突然フロア内全ての電話がけたたましく鳴り出した。
何事かと思っていると、1人の人間が焦ったようにフロアに駆けてくるなり大声で叫んだ。
「エッジ・オブ・オーシャンが…!!ば、爆発しました……!!!」
……は?
エッジ・オブ・オーシャンが、爆発…?
「どういうことですか」
「自分も詳しくは分からないのですが、会場が全壊するほどの大規模な爆発があったと」
「ちょ、ちょっと待ってください、今日の会場点検の担当って……」
「確か、公安部です。
死傷者も何人か出ているらしく…」
それを聞いた途端、嫌な汗が全身を流れだした。
どうしよう、あいつが現場にいたら…、爆発に巻き込まれていたら…、怪我をしていたら…、
ーー……死んでいたら…、
寝不足なせいか、どんどん悪い方向へと考えが進んでいってしまう。
ダメだ、落ち着け、しっかりしろ。今は私情で取り乱している場合じゃない。
状況を把握して冷静に判断しなければ。指示を出さなくては。
分かっているはずなのに、それでも汗は止まらなくて、最悪の想像ばかりしてしまって、体は言うことを聞かず私はその場に崩れ落ちてしまった。
「だ、大丈夫ですか!?」
「…は、はい、大丈夫です…、すみません」
支えられながら、震える足に鞭打って立ち上がる。落ち着こうと深呼吸を試みるが、過呼吸気味で息が思うように吸えない。
どうしよう…どうしよう……、
震える手で頭を抱えていると、ふとポケットに入っている携帯が震えた。取り出してみると、画面には知らないアドレスからのメール。
恐る恐るそれ開くと、そこには『無事だ』というたった3文字が並んでいた。
それを見た途端、私は安堵に包まれる。
こんな誰が送ってきたとも分からないメールを信じるなんて馬鹿げているかもしれない。でも今は、これを信じる以外に方法はない。
そうして私は深く息を吸って、自分のやるべきことに行動を移した。