第37章 ゼロの
それから数日後、
東京サミットを間近に控えた今日、私は無事に屍と化していた。
『開催迫る東京サミットの最新情報をお送りします!
サミットはこちら、東京湾の埋立地にある統合型リゾート「エッジ・オブ・オーシャン」の国際会議場で行われます。来月の開業を予定しているエッジ・オブ・オーシャンは、臨海都市にふさわしく水をふんだんに取り入れてデザインされた多種多様な施設で構成されています!』
デスクに突っ伏しながら、フロアに設置されているテレビを無心で眺める。
『さらにこちらをご覧ください!敷地の外周を周回しているモノレール!!まさに、近未来を彷彿とさせるスマートシティの雰囲気を醸し出しているんです!
そうしてご覧の通り、エッジ・オブ・オーシャンは2本の橋で繋がっています!』
賑やかで楽しそうなレポーターの声が、寝不足で働かない私の頭を木霊する。
あー、しんど。
本来私の仕事は、当日現場での警備指示を出すこと。当日に至るまでの会場の点検や警備システムの下見は、他の部署で分担して行うのだ。その分担して行った仕事を報告書にまとめてもらって、それを私が集約し当日に活かす。
だから、当日までは私のやることはさほどそんなに無いはずだったんだ。
なのに……、
『サミット開催の当日に警備を担当する警視庁は、最大で2万2千人の警察官を都内の警備に充てると発表しました』
これ、これだよ。これのせいで私は絶賛三徹めだ。
誰だよ、2万2千人の警察官を都内の警備に充てるって決めたやつ。
その2万2千人の配置やら役割やら全てを決めているのは誰だ。私だよ。
これがさ、もっと早くに決定していればよかったものをここ最近になって突然発表するし、発表したらしたで私に丸投げ。まじで呪ってやろうか。
明日刑事部に同行して会場を下見に行くはずだったのに、お陰様で行けそうもない。
このままじゃ、会場の地図だけを見て当日の計画をたてにゃならん。無理ゲー。
これで当日問題でも起ころうものなら、全てが私の責任になる。
はぁ、やってらんねぇ。夜逃げでもしようかな。