第37章 ゼロの
2人で落ちた書類を拾っていると、青柳がとある書類に目を留めた。
「あのさん、これって」
「ん?あぁそれね。『NAZU不正アクセス事件』」
「これって1年前のやつですよね?さんこんなの扱ってましたっけ」
「いや、ちょっと手伝っただけ。FBI関連でNAZUともコネクションがあったから情報提供だけね」
「なるほど。
あ、そういえば、NAZUって言ったらもうすぐ『はくちょう』が帰ってきますね」
「あぁ、火星で試料採取してた無人探査機のはくちょうね。確か帰ってくる日が、丁度東京サミットの日と被るらしいのよ」
「うわぁ、それ忙しくなるやつすね」
「そう、それもあって憂鬱なの。
ねぇ、知ってる?はくちょうがどうやって帰還するか」
「どうやって帰還するんですか?」
「探査機本体を大気圏で燃やして、直径4メートルの地球帰還カプセルだけを大気圏に突入させるの。その後は、パラシュートで降下して日本近海の太平洋上に着水する予定。
すごいのがさ、カプセルににはGPSを積んだ精密誘導システムってのがあってね、それのお陰で落下地点が半径200メートル以内に収まるのよ!すごくない!?」
「へぇー。これまた随分と詳しいっすね」
「言ったでしょ?NAZUとはコネクションがあるの」
「流石さんですお見逸れしました。
ってわけで、この書類は処分しちゃっていいですよね。サミットとは関係ないですし」
そう言いながら青柳は、書類を自分の脇に乱雑に挟んだ。すかさずその書類を奪う。
「ダメよ!!いつか必要になるかもしれないじゃない!」
「はぁ、そうやって手当たり次第に取っておくから書類が片付かないんですよ。そのうち自分が何の書類を取っておいているのかも分からなくなりますって」
「何の書類を取っておいているかくらい全部覚えてるもん。
処分なんて絶対ダメ!!」
「わ、分かりましたって。とりあえず、今必要のない書類はいくつか俺が預かっておきますから」
「ひとつでも書類が欠けたら、あんたの首切るから」
「こ、怖いこと言わないでくださいよ」
「それくらい大事に扱えってこと!情報は宝なんだから」
「はいはい、了解です」
そんなこんなで書類整理も程々に、東京サミットへの準備が始まったのだった。