第23章 中継
伊達と高木くんは相当仲が良かったんだよな。
伊達の葬式の時も高木くん、相当落ち込んでいたし。
___『さん、すみません。俺、伊達さんのそばにいたのに、なのに…
俺のせいです。俺が不甲斐ないせいで……』
『……死んだ奴らをどう生かすかは、生きてる俺ら次第だ』
『…え?』
『伊達が私にくれた言葉よ。
伊達はあなたのせいだなんてこれっぽっちも思っちゃいない。
それよりも、あなたがこれから刑事として活躍する姿に期待してるんじゃないかな』
『………俺、伊達さんみたいな刑事になります。
正義感があって強くて優しいそんな刑事に、早くなってみせます』
『うん、私も楽しみにしてるわ』
______
有言実行と言うにはまだ早いかもしれないが、少なくとも高木くんは理想の刑事になるために全力で頑張っていると思う。
そういえば、伊達と飲んでる時に“ワタルブラザーズ”の話もよく聞かされたな。
ーー…“ワタル”、か…
ふと、頭の中で嫌な想像がなされたが、そんな訳ないとすぐに切り替えた。
______
あれから数時間が経過しているが、状況は一向に進展しない。
例の3件の自殺者の遺族を調べたところ、
1件目の徳木さんの実家は高知なのだが、半年前に引っ越したようでまだ所在が掴めていない。
2件目のナタリー・来間さんは北海道生まれで、唯一の肉親である両親はナタリーさんの遺体を引取りに来る途中で交通事故に巻き込まれて2人とも他界。
3件目の彦上さんは出身地を偽って働いていたらしく、身元は不明。ただ、職場の仲間の話によるとたまに博多弁が出ていたとのこと。
四国に北海道に九州…どれも一泊する距離なんだよな。
「あっ!!」
映像を監視していた千葉くんが声を上げた。
「どうしたの!?」
「と、突然画面が揺れ出して…!!」
「こ、これは地震か…!?」
一同が騒然とした。
もし本当に画面の先が揺れているのなら、高木くんが落ちかねない。
「ん?いや、待ってください」
画面をよく見ると、羽のようなものが見える。
しばらくすると、カラスが高木くんの元へ降り立った。
「地震じゃありません。
恐らく、カメラが固定されている棒か何かにカラスが止まったためにその振動で画面が揺れていたようです」