第23章 中継
私は佐藤に付き添い、子供たちから犯人の情報を聞いていた。
「こんな感じのおじさんが、あのタブレットをあなた達に渡したのね?」
子供たちからの証言を元に描かれた似顔絵を片手に質問する佐藤。
「おう」
「最初、高木渉刑事の知り合いかって聞かれて、そうですって答えたら…」
「高木刑事の恋人の刑事さんにあれを渡してって言われたよ」
となると佐藤にも恨みを持っている人物である可能性も考えられるか。
いや、犯人は高木くんのことはフルネームで知っているのに、佐藤の事は“高木渉刑事の恋人の刑事”としか認識していないようだった。
その可能性は無いな。
やはり高木くん絡みか…。
しばらくすると、先週高木くんが資料室から涙ぐみながら出てきたという情報が入った。
高木くんが見ていたというその資料は全部で3件。
全て、1年ほど前に首吊り自殺した女性のものばかりだったという。
1件目は、東都大学医学部6年生の徳木侑子さん。
足元にあった遺書によると、自殺する数日前に車で人を轢き逃げしてしまい、その良心の呵責に堪えかねて首吊り自殺したとのこと。彼女の自宅マンションは女性らしくない部屋だったが、きちんと整理されていたらしい。
2件目は、英会話スクールの講師で母親がアメリカ人のナタリー・来間さん。
自殺する直前に母親に送っていたメールの内容と部屋にあったカレンダーに英語で書かれたDATE(デート)の多数の書き込みから、自殺した理由は恋人に捨てられて絶望したからだと考えられている。カレンダーによると、自殺をした日にもデートの約束があったんだとか。
3件目は、六本木のバーのホステスで人気NO.1だった彦上京華さん。
かなり稼いでいたようだが、、彼氏が結婚詐欺師だと知らずに貢ぎ続け、自分は我慢して古いアパートに住んでいたらしい。
彼氏が結婚詐欺師だと分かると酒に溺れて自暴自棄になり、ビールの空き缶が散乱する部屋で首を吊って死亡してしまったそうだ。
正直、どれも高木くんとはあまり関係無いように思える。
そういえば、3件目の彦上さんの彼氏であった結婚詐欺師は、詐欺容疑ではなく刺殺事件を起こした容疑で伊達に逮捕されたんだったな。
その後すぐに、伊達は居眠り運転の車に跳ねられて亡くなってしまったんだけれど。
確かその場に高木くんもいたんだっけ。