第95章 ★ 出発・再会 ★ 夢主視点 ★ ① ★
「そんな顔しないでおいでよ」
嚇母)“…”
「雲母なら喜んで入ってくるのに」
嚇母)“…今日だけだから”
「ふふっ…うん。今日だけ今日だけ」
嚇母)“…はぁ”
嚇母はため息を付いて私の服の中に入って胸元から顔を出した
そんな嚇母を抱き締めたら怒られた
私は両腕を頭の後ろに持っていってあぐらをかいて
小さく息を吐いた
「今日は気持ち悪いぐらい月が綺麗だからよく見えるね」
嚇母)“…そうだね”
「もう見る事ないと思ってたから…変な感じ」
嚇母)“…ねぇ、アヤ”
笑っていれば
嚇母に真剣な声で呼ばれた
「ぅえ?なに?」
嚇母)“…君は”
「ん?」
嚇母)“君は本当に自分の事知りたい?”
「…」
どう答えようと思っていれば
嚇母がゆっくり振り返った
その顔はかなり真剣だった
嚇母)“今後君があっちの世界で生きていくと決めたなら…僕は君が自分の事を知っといた方がいいと思った。その必要があると思った”
「…」
嚇母)“でもそれは僕が勝手に思っただけ…だから君は本当に自分の事を知りたい?君が望まないなら…”
「嚇母」
嚇母)“…”
「私、は…」
嚇母)“…うん”
真剣に考えてくれてる嚇母には申し訳ないが
「…正直、どうでもいい」
嚇母)“…だと思ったよ”
嚇母はため息混じりに呟いて
視線を私から外して前に戻した
…だって…
「だって、知ったら…アヤでいられなくなる気がするもん」
嚇母)“…”
「私はもう誰にもなりなくない…アヤ以外いらない」
嚇母)“…ならこれは僕の知り合いの女の子の話”
「え?」
嚇母の知り合いの女の子?
急にどうしたんだろう
嚇母)“今から20年前。この世界では30年程前の話”
「?」