第4章 初 体 験(♡♡)
ここから間に1週間挟んで来週になれば、トーナメント表それぞれの優勝チームが4校決まり、さらにそこから2校にしぼられる。
あとはもう、ただ普段の練習をひたすらに、試合を想定して、今日できたことを確実にできるようにすること、そして今日できなかったことを少しでも改善するだけだ。大丈夫、今年の音駒も、ちゃんと強い。
『疲れてると思うから、たくさん食べて、
お風呂して、ゆっくり休むんだよ』
「はい!大会終わったらデートしましょうね!」
チュッチュと投げキッスするリエーフに手を振って、通話を切る。井闥山、それから梟谷はきっと勝ち上がってくるだろう。それに宮城では、烏野も頑張ってるはず。
次の大会までの1週間、言わずもがなリエーフは超絶忙しく、おはようと、お昼休みと、夜寝る前ぐらいしか連絡も返ってこなかった。毎日会いたい会いたいと言っているが、もう少しの我慢だ。わたしも大学の課題やらバイトやらで忙しく、気がつけば試合の前日になっていた。
差し入れ、なんか作ってくかなぁ。
現役の頃ははちみつレモン作ってたし、好評だったから、また持って行こう。ただでさえ1日に何試合も詰め込まれ、疲労を回復する間もないはずだ。クエン酸取って、元気になってもらわないと。
近くのスーパーへ買い物に行き、帰ってきてすぐ作る。お母さんは材料だけ見て、明日応援行くのか聞いてきた。勘のいい母だ。
『輪切りにして、種取って…ポリ袋に入れて…』
あとは一晩冷やしておけば完成。前日だから、あんまり遅くならないようにしないとと思い、リエーフにおやすみの連絡を入れて眠りについた。
翌日。
じめっとした蒸し暑さと、止まない雨。髪のコンディションは最悪だし、化粧のり悪いし、最悪だけど今日は何がなんでも出かけなくちゃいけない。黒いノースリーブワンピースに、白いカーディガン、それに音駒カラーの赤リップと赤いスニーカーを履いた。はちみつレモンを忘れずに持って、雨の中傘を差して急ぐ。
『ごめん、ちょっと遅れた』
「おー、柏木。ナニ、今日おしゃれじゃん」
『彼氏の試合見に行くんでね』
「惚気けやがって」
『けしかけたのそっちな?』