第4章 初 体 験(♡♡)
迎えたインターハイ予選初戦の日。
朝からバイトだったけど、もうソワソワして仕方なかった。休憩中に結果速報をSNSで調べて、無事に勝ったことを知る。それからリエーフにおめでとうの連絡。次の試合の結果を知る前に、休憩が終わってしまう。
「柏木さん今日なんか、大丈夫?」
『めっちゃすいません、超私情挟んでます』
だよね、とベテランのおばちゃんに言われる。良い私情、悪い私情どっちかと聞かれたから、もちろん、特大はっぴーな私情ですと答えた。それならいいじゃんと親指を立ててくれた、ありがとう、大好きなおばちゃん。
早くシフト終われ終われと祈っていたら、次の時間の男の子が早く来てくれていた。おばちゃんが気を利かせて柏木さん上がりやとウィンク。やっぱり好きだわ。
おばちゃんに今度コーヒーご馳走するねと約束し、急いで着替えて、お店を出る。スマホ開く、SNS、バレーボールインターハイ予選東京都、検索、結果、出た。
『音駒…よし、勝利……ッ!』
っしゃあとついガッツポーズすれば、通行人が何事かと振り返る。良かった、無事通過だ。お疲れ様とおめでとうをリエーフに送れば、ぽちりと既読が着いた。
すぐに鳴る、流行りの曲は着信音。
『リエーフ初日おつかれ、あとおめでとう!』
「ありがとう!ビデオにしてもいいスか?」
今みんなで帰ってるところで、そう言いながらカメラをオンにするリエーフ。手ぐしで前髪を整えて、通りの隅に寄ってから、わたしもカメラをオンにする。リエーフの後ろには犬岡や芝山、手白が映っている。そして外カメラに切りかえたらしく、孤爪のプリン頭がパッと映った。
「研磨さん、こっちこっち!」
「やめてよ…おれもう疲れたから……」
『孤爪も、お疲れ様〜!』
「ッ、悠里、ありがと…
とりあえずカメラ切り替えさせて欲しい…」
『おっけおっけ、リエーフカメラ戻して〜』
すごく嫌そうな声を孤爪が出すので、リエーフに頼めば、にゅん、と画面いっぱいに顔が映る。興奮冷めやらぬ、と言った様子で、みんなのファインプレーや相手の強烈な攻撃の話など、ひっきりなしに喋っている。リエーフたち2年生だけでなく、後ろにいるであろう後輩たちの声も聞こえる。仲が良いのは、いいことだ。