第4章 初 体 験(♡♡)
それからは、お互いに忙しすぎて、なかなか会えない日が続いた。そういえば、5月末でカッコカリは無くなって、正式にお付き合いが始まった。けど、デートなんかはろくに出来ていない。
週ごとに暖かくなっていく気温、増していく湿度、曇りがちな天気が、梅雨入りが近いことを教えてくれる。そしてそれは同時に、インターハイ予選が近いことも、意味していた。
『トーナメント表、見たよ、
井闥山とか梟谷とさすがに違うんだね』
「コテンパンにできなくて残念まであります」
出たなビッグマウスと笑えば、画面の向こうのリエーフは会いたいなぁと漏らした。そう、あの合宿行こうほぼ1ヶ月会えていない。このままだと会えないまま、インターハイ予選を迎えそうだ。
そんなこんなで寂しい思いからか、どちらが言うともなく最近はもっぱらビデオ通話である。もちろん、わたしも寂しい。そろそろくっつきたいし、キスも、まぁ、したいなって思う。顔を見れば見るほど、会いたい気持ちは大きくなる。
『初日はどうしてもシフト休めなかったんだけど、
残りの日程は絶対見に行くからね!』
「悠里にいいとこ見せるために頑張ります」
何それ、カッコよしおじゃん。
黒尾のこととか、孤爪のこと、バレーのこと、お弁当のこと、授業のこと。他愛のないことを話せば話すほど、会いたくなる。そして、全国に行って欲しいと、そう思う。
インターハイに行けるのは、たったの2校。春高と違って、まず決勝まで残らないとそもそも全国の舞台には行けないし、そこから更に4校総当りで勝ち取る、狭き門。同じ山にに井闥山と梟谷がいないからって安心はできない。
『勝ってね、リエーフ、
そんでわたし応援と旅行したいから!』
「まじ任せてください、50点取りますから」
『それよりも、ヘビーな1点、でしょ?』
「それもとります!」
春高のタイムアウトで黒尾が言ってたこと真似してみたけど、この子どんどん欲張りになってくな。それでも、勝利に貪欲なのは、良い事だ。
そろそろ寝るからまたね、おやすみなさい、画面に手を振って、赤い切断ボタンを押せば、部屋はしんと静かになった。
インハイかぁ、楽しみだなぁ。トーナメント表をもう一度眺め、それから電気を消して、布団に潜った。