第13章 幸せすぎる無理難題と悲しすぎる別れの口火
「鈴音。お前、今階級いくつなんだ?」
「階級?そんなの興味ないから把握もしてない」
そう答えた私に獪岳は薄ら笑いを更に深め
「やっぱりなぁ。どうせ言えないような低い階級なんだろ?」
「……はぁ?」
そう言った。けれども顎に手を当て、いかにも自分は考えているという格好をしながら”いや待てよ…”と小さな声で呟くと
「違うな、その逆だ。実力に伴わねぇくらい高いんだろ?」
無駄に明るい声色でそんなことを言ってきた。
「………」
段々と私の頭が、水を火にかけているかのように暑さを増していく。それでも
冷静に
真に受けない
こいつはもともとこうやって人を馬鹿にする人間
同じ土俵に乗る必要はない
自分自身に言い聞かせ、両手の拳を強く握りしめ懸命に耐える。
「…そう思うんなら勝手にどうぞお好きに。もういい?あんたのそんな話を聞いてられるほど、私も暇じゃないの?」
我ながら厭味ったらしい言い方だなぁと思いながらも、向こうがそれなりの対応をしてきているのだからその程度なら許されるだろう。
「じゃあね。せいぜい死なないことを祈っている」
それだけ告げ、別にそっちの方向に行く予定ではないのだが、獪岳に背を向け歩き出そうとした。けれども
「…っち。お前みたいな弱い奴が柱の継子に選ばれるなんざありえねぇ。どうせ、色目でも使って取り入ったんだろ?音柱は嫁が3人もいるって聞いたことあるからなぁ。相当な女好きだしな」
その言葉に、私は1歩踏み出した足をその場で止めた。
……あいつ…今何を言ったの…?
あまりの腹立たしい発言に、私は何も言うことが出来ず、ただ目を見開きながら眼前に広がる地面を視界に映すのみ。そんな私に気が付いているのかいないのか、獪岳は更にその口を開いていく。
「どうせその嫁ってやつらも、お前みたいに変な女たちなんだ「っ今すぐその煩い口閉じなさいよ」!!!」
天元さんに続き、雛鶴さんまきをさん須磨さんを馬鹿にするようなその発言に、頭が一気に沸点に達してしまった私は、気が付いた時には固く握りしめた右手の拳を獪岳に向け振り上げていた。