第11章 さよなら、ごめんなさい、そしてただいま※
そんな私の頭頂部に
ポン
と、大きくて温かな手のひらが置かれ
「言っただろう?損得勘定だけで人間関係は測れない。そして俺の君への愛情を、そんなもので測られたくはない」
杏寿郎さんがそう言った。
「なんだい!なら私だって一緒だよ!?」
「わはは!相手がしずこさんとて、俺の鈴音に対する燃えるような愛には勝てまい!」
「なんだってぇ?」
「…っ…ふふ…」
そんな2人のふざけたやり取りが可笑しくて自然と笑みが溢れてしまう。更には
「俺も……混ぜてくれよ」
ボソリと呟いた倫太郎さんの一言がとどめとなり
「…ふっ…あはははは!」
涙をポロポロとこぼしながら、お腹を抱え笑ってしまったのだった。
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しずこさんと倫太郎さんに見送られ街を出た私と杏寿郎さんは、先日私が例の男性を追って走った道を駆け足に限りなく近い速足で歩いていた。
「…聞いてもいいですか?」
私の斜め前を歩く杏寿郎さんが
「なんだ?」
こちらに振り返ることなく返事をした。
「…私があそこにいると杏寿郎さんに報告したのは…隠の男性ですか?」
「あぁそうだ」
とある刀鍛冶の機嫌を取るためにみたらし団子が美味いと有名な店まで猿渡はるばる買い物に来た後藤さんという隠の男性は、その店で、”こんな顔した隊士がいた気がする”と、その店で働く私を見て思ったらしい。けれども、まさか隊士である人間がこんな山奥の甘味屋で働いているわけがないと結論付け、特に何もすることなく目的の団子だけを購入し店を出た。
けれどもその後、団子片手に森の中を歩いていた際突如鳴り響いた雷鳴と気味の悪い断末魔、そして頸と胴体が別々になった鬼の姿を目にし、やはり先ほどの女は何かあると上に報告をあげ、その報告がお館様まであがり、お館様が杏寿郎さん、そして天元さんに私らしき人物が見つかったとお教えになったとのことだ。
杏寿郎さんからその話を聞いた私は
「……嘘…!」
あまりの衝撃でその場で立ち止まってしまう。
…まさか…お館様直々に…?なんで…?…それに…私のことを探していたとかでは…なかったの?
ぐるぐると思考を巡らせてみるも、全く予期していなかったお館様の登場に考えが上手くまとまらない。