第11章 さよなら、ごめんなさい、そしてただいま※
「…っあの!すみません!」
慌てて立ち上がり、先ほどおばさんが消えていった店の裏へと続くと思われる場所へと近づきながら、おばさんに聞こえるようにと声を掛けた。すると
「なんだい?」
おばさんが、不思議そうな顔をしながら顔を出してくれた。
「っあの…従業員募集の紙…あれまだ募集していますか!?」
私がそう尋ねると、おばさんは目を見開き驚いた表情を見せる。そしてその後、眉の端を下げながら困ったような笑みを浮かべ
「あの張り紙を見てくれたのかい?ありがとう。募集はまだしてるけど…書いてある通り力のある人…出来れば男の人がいいんだよね」
それとなくお断りをされてしまいそうになる。
「あの…私、こう見えて力には凄く自信があるんです!その辺にいる男の人よりは絶対に力があります!お団子も…とっても大好きで!なんでも、力仕事も汚れ仕事も…なんでも!なんでも一生懸命やるので…どうか私を雇ってください!」
私は慌ててそう言いながらおばさんに近づきバッと深く深く頭を下げた。
「……」
困惑したおばさんの様子がひしひしと伝わってきたが
「…どうか…お願いします!」
そのことに気づかないふりをし、さらに深く頭を下げる。
「……」
しばらく沈黙が続いた後
「…材料の粉は凄く重いし、こねるのに物凄い力がいるよ?」
おばさんが静かに、確認するような声色でそう尋ねてきた。
「…っはい!重いもの…自分よりも重くてもちゃんと持ち上げられるし、捏ねる力も…絶対…十分にあります!」
「…それに、蒸し立ての団子の生地は凄く熱いよ?」
そう答えた私に、おばさんは更に尋ねてくる。
「人よりも痛みには強いので、熱さにだって負けません!なによりもお団子は大好物なので!重くても捏ねるのが大変でも熱くても…っ全く苦じゃありません!だからどうか…どうかお願いしますっ!」
私は顔を上げ、おばさんの目をじっと見つめながら必死でお願いした。