第6章 生きてこの先の刻を共に
迫りくる音と気配に、死を覚悟しようとしたその時
にゅっ
突如として現れた逞しい腕が私の腹部に回され、
グイ
「…っ!?」
間一髪のところで拳を食らわずに済んだ。
その腕の主なんて、考えるまでもなく一人しかいない。
「…助かりました。ありがとうございます」
炎柱様はゆっくりと私を地面に降ろし
「君はいくらなんでも一人で無茶をしすぎだ」
不機嫌そうな声色でそう言った。
「…炎柱様にだけは、言われたくありません」
肩を竦めながら私がそう言うと
「とんだひねくれ者だな!」
炎柱がそう言った。
「ひねくれ者なのは事実ですのでご自由にそうお思いくださ「だが俺は、君のそんなところをとても可愛らしく思っている!」…へ…?」
憎まれ口を遮られ、私に投げ掛けられたのはこの緊迫した状況に不釣り合いな”可愛い”という言葉。
ポカンと炎柱様を見上げながら固まっている私に
「奴がまた来る。いつまでも気の抜けた顔をしている場合じゃない。次の攻撃に備え集中!」
炎柱様にそう注意を受けてしまう。
…誰のせいだと思ってるのよ。
そう思いながらも、私は先ほど命からがら拾い上げたクナイを右手に構えた。
「ところで日輪刀はどうした?」
「え?今更それ聞きます?重いんで炭治郎君に預かってもらっています」
「…日輪刀も持たずに上弦ノ鬼と戦っているとは…よもやよもやだ」
「重いと動きが遅くなるから仕方なかったんです。ほら!来ますよ!」
正面を見ると、禍々しい気配を背負った上弦ノ参が、怒り狂った表情でこちらを見ていた。
「…正々堂々と戦えないのであれば、もうお前に興味は無い!その煩い蠅のような女と後ろにいる弱者諸共消え失せるがいい!!」
そう言った上弦ノ参は
ゴォォォォォォォ
音が聴こえて来る程の殺気を炎柱様と私に向け飛ばし、その様子から今までで1番力を込めた攻撃を放とうとしていることが容易に想像できた。