第6章 生きてこの先の刻を共に
「…すまない荒山。せっかく君が生きて家に帰れと言ってくれたが…それは出来そうにない」
炎柱様はそう言ってぐっと身を屈め、右斜め下に低く刀を構えた。隣から燃えるような熱い気配を感じ、それが先ほど言っていた奥義を放とうとしていていることが分かった。
”やめてください”
とは言えなかった。
正面にいる上弦ノ参から感じるその気配から、それに負けないくらいの攻撃、つまり炎柱様が奥義と呼ぶ技でしか防ぎきれないということがなんとなくわかってしまったからだ。
それでも
「…私、諦めませんから。だってもうすぐ陽光が私たちの味方をしてくれるんですもん。だからお願いです。頸なんて切らなくて良いから…必ず生き残れる方法を…選んで下さい。私…もっと炎柱様の事…たくさん知りたいんです。これでお別れだなんて…絶対に嫌ですから!」
炎柱様を生きて家に帰してあげること、そしてこれからも同じ刻を過ごし生きていく事を諦めるわけにはいかない。遠くからでいい。その姿を可能な限り見つめていたい。
「……そうか。ならば……善処しよう」
「あ、言いましたね?嘘だったら……お館様に言いつけますから」
クナイを右手に構え、私も身を低くし
シィィィィィィィィイ
霹靂一閃の構えを取った。
"破壊殺…っ滅式!!!”
上弦ノ参が技を放つと同時に
「炎の呼吸奥義…玖ノ型・煉獄…っ!!!」
炎柱様が炎のように燃え上がる龍を纏い上弦ノ参へと切り込んでいく。私もそれに合わせ
「雷の呼吸壱ノ型…霹靂一閃…っ!!!」
二人がぶつかり合う位置から丁度水平に位置する場所に移動した。
…この鬼は、兎に角拳で戦う事に拘ってる。炎柱様に致命傷を与えようとする攻撃も、絶対に"拳"を使った攻撃に違いない…!
そう思い、私は兎に角その拳の動きに神経を集中した。