第6章 生きてこの先の刻を共に
「退がれと言っておいてこんなことを頼むのはいささか気がひけるが…荒山がどう戦うのか、先ほどの動きで大体は把握出来た。危ないと思ったら直ぐ逃げて構わない。可能な範囲で、俺の戦いを援護してほしい」
炎柱様は先程までの怒った様子から、すっかりと見慣れてしまったいつもの炎柱様の表情に戻ると、私に向けそう言った。
「もちろんです。私は元よりそのつもり。…微力ではありますが、必ず炎柱様の力になると約束します。だから、どうか私のことを信じてください」
じっと、強い意志を込めて私が炎柱様のことを見返すと
「…うむ。頼んだぞ」
炎柱様がそう力強く言葉を返してくれた。
お互いの視線が絡み合い、こんな状況にも関わらず、私と炎柱様はほんの数秒間だが、黙ったままお互いの目を見つめあっていた。
けれども
ズンッ
重苦しい殺気が私と炎柱様の方へと真っ直ぐ飛ばされ
「漸くくだらない話し合いがすんだようだな?ならば杏寿郎、戦いの続きを…始めよう!」
そう言って上弦ノ参が炎柱様との距離を一気に詰めてきた。
ザッ
後ろへと大きく跳躍し、私はその攻撃の範囲内から距離を取る。
ガッ…ガキン…ズドン
そのまま二人から距離をとり続け、限界まで耳を澄ませ、二人の身体から発される音を拾い聴く。そうすれば、すべての動作を目だけで見切れなくても、次の動作をなんとか予測できた。
…別に、あの鬼に攻撃を食らわせる必要はない。軌道をずらして、炎柱様への攻撃が防げればそれで十分。
一方は刀、一方は素手で激しく戦う中、私は上弦ノ参にだけ当たるようにタイミングを図りクナイを投げていた。そうして、私の方に向かって来る気配が少しでも感じ取れると、雷の呼吸をつかい即座に距離を取ることを繰り返した。