第26章 今宵はふたりで【過去作派生中編 🤍→主←🐾 ♟️】
コツ、コツ……とふた組と足音が夜の廊下に響く。
窓ガラスから降り注ぐ月灯りに照らされ、ヴァリスの銀の髪が煌めく。
「…………。」
「…………………。」
フルーレは自分の先導で廊下を往く彼女にういて思考に載せる。
(主様……。)
初めて会った時、「美しい」と称された途端色褪せた紺碧色の瞳。
その瞳に宿る突き放すように鮮烈な光を、
苦い笑みを佩いた唇の歪さを、今でも覚えている。
その姿を賞賛されることを極度に嫌う、勝ち気で繊細な少女。
その内面を彩る苦悩と悲しみも、
その身を縛る過去の痛みも、いつか分かち合えると信じている。
「それにしても、フルーレのピアノは綺麗だね」
出し抜けに呟かれたその声に心音が駆ける。
思わず彼女を見つめると、ヴァリスは優しく微笑っていた。
問うように視線を注ぐと、「私のおばあちゃんはピアニストだったんだ」と紡ぐ。
「小さい頃ね……私は眠れない夜によくおばあちゃんにピアノを弾いてってせがんでいたの。
あの子守歌もその時に必ず弾いてくれてね………あなたのピアノは、おばあちゃんの音と同じに聴こえるんだ」
そう呟くヴァリスの目元に、優しく煌めく感情の色が宿っている。
フルーレは微笑みを返しながら唇をひらいた。