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訳アリ主と恋スル執事たち【あくねこ短編集】

第22章 砂糖菓子の鳥籠 Ⅱ 【君という名の鳥籠 予告中編 ♟】


ふら、その身から力が抜け落ちて、傾きかけたヴァリスの身体をボスキが抱き留める。


「っと……大丈夫かよ、アリエ殿」

力強く支えながら見下ろしてくる。その腕に掴まりながら、彼女は体制を整えた。



「平気よ」

彼の腕から指を解くと、ベリアンが駆け寄ってくる。



「アリエ殿……!」

手袋に包また指が頬にふれる。心配そうにゆらめく瞳に、ヴァリスは微笑んで見せた。



「来てくれてありがとう」

それからカレッセン公へと視線を向ける。



「…… カレッセン公」

紅に彩られた唇をひらく。その瞳の先で、彼は僅かに瞳を曇らせた。



「この状況を、どう説明なさるおつもりかしら?」

上辺は穏やかでもその言葉のふしぶしに針が宿る。

空気さえもひりつく中、彼はその薄い唇に弧を描いた。



「!」

ぐっと手を引かれ距離か近づく。気づいた時には彼の腕のなかだった。



密着する身体の逞しさに、ふれるその身の温かさに、ヴァリスが身を固くしているとその耳元で囁いた。



『眠れ』

その言葉を聴いた途端、ふら、と弛緩した身体が傾く。



瞼が重くなっていき、その内に鉛を流し込まれたごとく、

猛烈な気怠さが全身を支配した。



「アリエ殿!」

皆の声を辛うじてとらえらることが出来た刹那。

なんで、と唇を動かして、意識が混濁へと呑み込まれていった。
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