第18章 月嗤歌 ED Side A【☔️ ⇄ 主 *♟(激裏)】
(ヴァリス、っては呼んでくれないんだね)
こんな時でも自分への礼節を守る彼を、ほんの少しだけ憎らしく思う。
寂しさと歯痒さが胸のなかを満たして、ふいと視線を解いた。
「主様……?」
呼びかける声に唇をひらく。
「……ずるい」
「………?」
戸惑う瞳に唇を尖らせて、ありのままの思考を口にする。
「なんだか、………私だけがドキドキしてるみたい」
拗ねた調子で呟くと、はっとその瞳がみひらかれる。
「ユーハ、………んんっっ」
黙り込んでしまった彼と視線を結んだ刹那、その唇が重なる。
けれどそのキスは より激しく口腔内を蹂躙するような荒々しいもので、その情熱に驚いた。
「ん、んぅ………っ」
ちろちろと口腔内を暴れ回る舌は、ヴァリスの舌を囚えて離さない。
あまりの息苦しさに唇を解こうとしても、彼はそれを許さなかった。
熱い舌に絡め取られ、吸い上げられ、歯で柔く噛まれたりするうちに、段々とその身を支配していく快楽。
くたり、と糸の切れた操り人形のようにその身が弛緩する頃、漸く唇が離れた。
そして、そっと取られた指を導いた先は、彼の胸元。
服の上からでもその身の逞しさが窺い知れる心臓はドクドクと早鐘を打っていた。
「ユーハン、」
思わず彼の名を呼んだヴァリスを見下ろす。そしてその薄い唇をひらいた。
「緊張していない筈がないでしょう」
「!」
みひらく瞳の先に、フェアリーストーンの瞳。
けれどその双眸の奥に宿った情欲の焔はより激しさを増していて、伸びてきた指が頬をなぞる。
壊れ物を扱うような、優しく繊細な手付きに、胸のなかでじんわりと温もりが広がった。