第37章 姫の年越しシリーズ(2025年)・1月1日
信長「………十数える間に終わらせろ」
低い声で凄まれた客は殺されるのではないかと早口で挨拶を済ませた。
ものの10秒で終わり、すっ飛んで退出していくどこぞの大名を舞は気の毒そうに振り返っている。
「せっかく元日から来てくださったのに気の毒です…」
政宗「いーんだよ。毎年こんな感じなのに空気を読まずに元日に来るのが悪いんだ。
それより休憩だ。秀吉、少しのあいだ客を止めろよ」
秀吉「信長様、良いのですか?」
はやく終わらせるべきか舞の甘味が先か、秀吉が訊ねた時には信長は豆乳プリンの蓋を開けていた。
秀吉「…休憩だ。すぐ再会するから客を待たせておけ」
家臣「はっ」
束の間の休憩が始まり、それぞれが蓋を開けて食べ始める中、信長だけは匙を取らずプリンを眺めるだけだった。
訳を知っている舞は黙って笑みを浮かべている。
秀吉「信長様、食べないのですか?」
信長「うむ…」
「どうぞ召し上がってください。お気に召したらまた作りますから」
信長「腑抜けた顔だな」
「でしょう?」
信長のプリンにだけ黒蜜でニコニコと笑う顔が描かれており、退屈な仕事が続いた男を労っていた。
それを知らない周りは腑抜けた顔だと言われて嬉しそうにしている舞を不思議そうに見ていた。