第34章 呪いの器(三成君)
毒を警戒した政宗様が食事を担当し、秀吉様や光秀様は身の回りに危険が紛れ込まないように外部からの品を徹底的に検品している。
薬に関しても家康が体調を聞き取って都度処方してくれるし、女中さん達も物凄く気を使ってお世話してくれる。
三成君といえば私が大広間で倒れてから何かを調べているようで、仕事が終わると私の部屋の隣室で読書に勤しんでいた。
今も隣の部屋に居るけど、読書に没頭しているようで信長様の来訪に気づいていないようだ。
部下が顔を出さなくても信長様は不機嫌になるでもなく、私の部屋に持ち込んだ脇息にもたれて座っている。
信長「俺の験担ぎである貴様が頻繁に調子を崩し、城の者達に不安が広がっている。
さっさと治せ」
さっさと治せと言われてもどうやっても治らないから苦労している…とは言えない。
言い訳していると捉えられたらあとが怖い。
「はい、しばらく治療に専念いたします」
信長「針子部屋の長から報告を受けている。
朝、貴様の顔色が良いからと復帰を許可したが半刻したころから顔色が怪しくなって一刻後には頭が痛いと倒れたとな」
「そのとおりです」
元気になったから今度こそ大丈夫と出勤して、あえなく3度目の緊急搬送になってしまった。
「作日もその前も元気だったんです。治ったと思い出勤しましたがこんなことになってしまって…、細かいものを見るのが駄目なんでしょうか」
目から入った情報を脳が処理できないのなら脳の病気か。
それともホルモンバランスの崩れとか、自覚なしの精神疾患の可能性だってある。
その分野の疾病だったとしたら戦国時代での診断は不可能で、『一度現代に帰って診てもらおうか』という考えが何度も頭にちらついていた。
(でもワームホールがそんなに便利に開いてくれるとは限らないんだよね)
現代に帰れない、もしくは現代から戦国時代に戻れない。
ワームホールはそういう不確定要素があるから、なるべく使いたくない。