第34章 呪いの器(三成君)
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ざわざわ…
騒めく大広間に秀吉さんの声が響いた。
秀吉「まだ話し合いが終わっていないんだ。
皆の者、私語を慎め」
千代姫と三成君の噂が下火になってきた頃、安土の大広間では市場の流通について話し合いが行われていた。
城下で物を仕入れる機会が多い私も参加していたのだけれど、大広間にはミチミチと人が詰め込まれて空気が悪く、息苦しさを感じて窓の方を見れば、たくさんある窓は全部開けられていた。
大広間に入りきらなかった人達が襖を開けた廊下にまで座っていて、これ以上の換気は望めそうにない。
「はあ」
ここ最近頭痛に悩まされていたところにこの状況。
脈に合わせてズキ、ズキと痛むので、こめかみをおさえて俯いた。
(なんとかやり過ごさないと……)
広間の中央では意見の応酬が続いていて、話し合いはいっこうに終わる気配がない。
我慢しているうちに悪心の症状も出てきて畳に手をついた。
(これ以上座っていられない…)
周りは議論に夢中で、そんな人たちに体調不良を訴えるのは気が引けた。
どうしようと迷っているうちに気分はどんどん悪くなっていく。
かつてこれほど痛かったことはないというくらいズキンズキンと頭が痛む。
割れそうというよりは頭が壊れそうだ。
そんな時、少し離れた所で記録係をしていた三成君が速やかにやってきた。
三成「舞様、どこか具合が悪いのですか?」
「頭が…痛い…」
限界だった私は三成君にズルズルともたれかかった。三成君の動きを追っていた人達が私の急変に驚き、話し合いが中断した。
秀吉「舞、どうした!」
三成「家康様っ、舞様を診ていただけませんか」
家康「わかった」
家康の声がしてすぐに手首の脈をとられた。
脈を捉えた指を、不自然に速い脈と不必要に強い脈が押し返している。