第34章 呪いの器(三成君)
「ではお言葉に甘えてこちらの簪をいただきますね。
この紫色の真珠はとても珍しいですが本当によろしいのですか?」
姫「ええ。それは持参した荷物の中にあったのですが、私には似合わないと使わずに仕舞っておいたのです。
私よりも舞様にお似合いだと思いましてお持ちしました」
こんなに美しい品が一度も使われないまま仕舞われていたのかと思うと庶民感覚で言うととても勿体ない。
「ありがたく使わせていただきます」
髪にさしていた簪を抜き取り、千代姫からもらった簪を髪にそっとさしこんだ。
人前で髪をいじって行儀が悪かったかなという心配は無用だった。
部屋に入ってきてから終始憂い顔だった千代姫の表情が初めて和らいだ。
「鏡が無いので私から見えないのですが似合っていますか?」
姫「とてもよくお似合いです、舞様」
「ありがとう、千代姫。
あ、そうだ!私も使っていない簪が何本かあるの。せっかくだから交換しよ?」
姫「まぁ……」
それからというもの私達は友達のように毎日顔を合わせて過ごした。
女同士で城下におりて買い物を楽しんだり私が苦手な茶の湯を千代姫が教えてくれたり、お互いの着物を交換して着てみたこともあった。
だから千代姫が国に帰る時はお互い涙が止まらず、必ずまた会おうと約束してお別れしたのだった。