第34章 呪いの器(三成君)
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三成君の御殿に帰り、互いを求める甘い空気に酔いながら柔らかい褥にもつれこんだ。
着物を脱がしにかかっていた三成君の手がぴたりと止まり、長い指が触れている場所は、さっき家康が丹念に薬を塗ってくれたところだ。
三成「かゆみはどうですか?」
「家康が薬を塗ってくれたから全然かゆくないよ。それより三成君は襖を開けた瞬間、何とも思わなかったの?
浮気の現場だと思われても仕方なかったのに……」
三成「家康様は私の恋仲に悪戯する方ではないとわかっていますから、治療の最中だと判断しました」
この二人ときたら異常なほど相手を理解して信頼している。
いくら三成君が愛していると言ってくれても、どうしても拗ねたくなる。
三成「家康様と息が合っているというのは光栄なことですが、妬く必要などありませんよ」
何も言っていないうちにそう言われると、う…、と言葉に詰まった。
「な、なんで妬いてるってわかったの?」
三成「とてもご不満そうな顔をしていたので」
不満そうだと指摘しながら三成君は嬉しそうに笑っている。着ていた物を脱いで、仰向けに寝る私に覆いかぶさってきた。
鍛えられたすべらかな身体が肌に吸いついてきて、読書家である前にこの人は武将なんだと思い出させてくれる。
三成「嫉妬は舞様が私を想っているという何よりの証拠。
妬かせるようなことをして大変不本意ですが妬いてもらって私は幸せです」
「三成君がひどい……」
三成「ふふ、申し訳ありません。
愛しています、舞様」
久しぶりに感じる三成君の温もりに身体が溶けそうなくらい熱くなっている。
心臓がドキドキと昂る中、三成君は私の頬にキスをしながら囁いた。
三成「こうして閨で見せる姿は舞様だけが知っている私です。
何度だって重なりたいと、いつも舞を泣かせてしまいますが…」
「っ、嫌で泣いているんじゃないよ…?」
三成「わかっています。いつも『やめて』と泣く顔が蕩けていますから」