第34章 呪いの器(三成君)
家康「ああ、それはもう解決した。
それよりも信長様が言っていたアレなんだけど、どうなった?」
(信長様のアレ?)
三成「次の機会までに数を揃えられるか不明のため、不確定な要素を組み込むのは不安だという声がありましてアレはまだ審議中のようです」
(うーん、銃の話し?それとも金平糖の仕入れのことかな?)
考えているうちに話はどんどん進んでいく。
三成「それで秀吉様が…」
家康「その件は慶次が片付けたって聞いた。
それよりも三成が好きそうな本があそこの本屋に入荷していたけど知ってる?」
三成「ああ、あそこの本屋ですね」
三成君の行きつけの本屋はいくつかある。
(秀吉さんがどうしたんだろう。
『あそこの本屋』ってどこ?)
家康「それであの事なんだけど」
三成「ああ、それはもう既に用意を済ませました」
(あの事?すでに用意って何…?
この2人、長く連れ添った夫婦みたいに『あれ』『それ』で会話が成りたってる!)
ぴったりと息の合ったやりとりについていけない。姫様と浮気じゃなかったのは嬉しいけど家康と三成君の仲が良すぎて不安になった。
『私より三成君を理解している』という点にみっともなく対抗心が湧きあがってくる。
三成君が家康を見る目はキラキラと輝いていて、私を見つめる時以上にきらめいているように見えた。
「やっぱり二人は仲良しなんじゃない」
家康「ちょっとそれ、なんの冗談?」
三成「なんのことでしょう?」
三成君より家康の反応が早くて、物凄いしかめっ面をしている。
「あれそれで会話が成り立つような二人が仲が悪いわけないでしょ?
あ、せっかく迎えに来てくれたのに悪いけど安土城に帰るね。じゃあ…」
三成「舞様、お待ちください」
お暇(いとま)しようとしたら三成君に引き留められた。
袖を強く引かれたせいで、整えたばかりの着物の肩が落ちてしまった。