第34章 呪いの器(三成君)
三成「しかし舞様が浮気を心配していたとは露知らず、私は私であの雷雨がワームホールというもので、大切なあなたが500年後の世に行ってしまうのではないかと心配しておりました。
こうしてここに居てくださって安心しました。帰らずにいてくれてありがとうございます」
「ワームホール?あっ、そういえばそうだった…。
あのとき全然頭になかったよ」
突然の雨と雷といえばワームホールだ。
これまでは雷が鳴ると室内に避難し、その後も雨が降り始めないか心配していたし、三成君も例え大好きな読書中であっても雷雨にだけはアンテナを張っているようで、いつも私のところに飛んできてくれた。
お互いがワームホールに注意を払って引き裂かれることのないよう気を配っていたのだ。
それなのに今日の私といえば衝撃的な場面を目撃したばかりに、ワームホールの可能性をちっとも考えていなかったのだ。
(鈍感過ぎ…。あれがワームホールだったら絶対つかまってた)
「心配してくれたの?」
三成「ええ。姫様を城に運ぶ手配をしながら、ずっと舞様のことを想っておりました」
「あ、ありがとう」
整った顔立ちに可愛らしい笑顔を浮かべられ、胸が勝手に早鐘を打ち始める。
膝の上で手をもじもじさせていると家康がわざとらしい咳ばらいをした。
家康「ちょっと、気が散るからここで甘い雰囲気出さないでくれる?」
「わ、ご、ごめんね」
すぐに謝ると家康は『浮気じゃなくて良かったね』と言ってくれて、雨が止んだことを理由にやんわりと帰宅を促された。
三成「家康様、そういえば政宗様の…」
政宗様がどうしたんだろうと黙って聞いていると、最後まで聞かないうちに家康が答えた。