第34章 呪いの器(三成君)
三成「雨に見舞われて濡れてしまったと聞いてお迎えに来ました。
治療中とお見受けしますが何かあったのですか?」
(あれ?意外と普通…)
家康「湯浴みして着替えたから風邪の心配はない。
だけど薬草でかぶれをおこした」
淡々と説明する家康に、三成君がいつものごとく大きく頷いた。
三成「そうですか。家康様のお手伝いをしながら待っていてくださったんですね。
お待たせして申し訳ありませんでした」
三成君が私の横に当然のように座った。
雨の中を迎えにきてくれたので着物のあちこちが濡れてしまっているのもかまわず、いつもと変わらない笑みを浮かべている。
(三成君だ…)
浮気を疑って落ち込んでいたのも忘れ、素敵な笑顔に安堵し、抱きついてしまいたくなった。
「雨なのに迎えに来てくれてありがとう」
三成「雨だからこそですよ、舞様。あなたが濡れてしまっては大変ですから」
胸がジンとして感激しているうちに処置が終わり、いそいそと着物を整えた。
三成君をチラと伺い見れば、その微笑みのどこにもやましい感情はなく、まして私と家康を疑っている気配もない。
『よし、真相を聞こう!』と気持ちを整えた矢先、先を越すように三成君が口を開いた。
三成「今日は大名の姫様を案内していたのですが、突然の雷雨に動揺して倒れてしまわれました。
その対応に追われて迎えが遅くなってしまいました。舞様も家康様も申し訳ありませんでした」
三成君が申し訳なさそうに私の髪をひと撫でした。
「え………やっぱりそうなの?」
三成「やっぱりとはどういう意味でしょうか?」
髪を撫でる手が毛先まで行かずにピタと止まった。
お互いキョトンとした顔で見つめ合い、そんな私達に呆れて家康が横から説明してくれた。