第34章 呪いの器(三成君)
家康「王子?皇子のこと?」
「そうね、国を治めている人の息子のこと。
二人居れば第一王子、第二王子ってなるかな」
東宮様や領地の大名で言えば息子みたいな…と言うと、家康様に『並べるのは不敬だよ』と叱られてしまった。
だったらどう説明すれば良かったのかと拗ねた顔をすると、家康様は説教顔をひっこめて浅く頷いた。
家康「まあ、王子の定義はわかった。
それで三成の行動に話を戻すけど、あいつは女に対してほぼ興味がないから、抱擁もお姫様抱っこも何かしら意味があったはずだ」
「意味…」
(そんな都合の良い捉え方ってある?)
三成君だって成人男性だ。絶対間違いを犯さないとは限らないじゃないと、つい勘繰ってしまう。
少しひねてしまっている私をスルーして家康様は真顔で案を出してくれた。
家康「抱きしめたのは落ち着かせるためとか」
「なんで落ち着かせるのに抱きしめるんですか。
背中を撫でるとか声をかけるとか他にも方法があるのに。
それに三成君に抱きしめられて落ち着くわけないです。心臓がとまります」
家康様は惚気はいらないとかなんとか言って綺麗な顔をしかめた。
家康「抱き上げたなら倒れる寸前、もしくは倒れたのかもしれない。
背中を撫でるだけじゃ落ち着けないような切羽つまった状態だったとしたら宿に入っていった理由も説明がつく」
「宿に入る必要があるんですか?」
そのままお城に運ぶとか人を呼ぶとかすれば良いのに。
動揺して気づかなかったけど、近くには姫様の護衛だって居たはずだ。
家康「あの時の雨はあんただって知ってるでしょ。凄い土砂降りだった。
そんな中、病人を運ぶよりも近場に寝かせられる場所があったら入る。
少なくとも俺ならそうする」
「そう……?」
浮気を疑ってかかっているので信じきれない。
信じたい気持ちもあるけれど本当に浮気だった時のダメージを想像して容易に信じてはいけないと心にブレーキがかかっている。