第34章 呪いの器(三成君)
(三成君が女の人に近づく理由……?)
「仕事関係…ですか?」
家康「そう。あいつはあの通りとぼけた態度だから相手に警戒心を与えずに情報を聞き出せる。
情報収集は光秀さん得意分野だけど、突発的にその辺から情報を仕入れる時は三成の方が成功率が高いんだ」
「ふーん…?」
今の話からすると、三成君は穏やかな物腰や天使の笑みが情報収集の武器になるとわかっていて行動していることになる。
(全然そんな感じしないな)
自分の魅力に一切気づいていないところが魅力的なのに、実はそれを武器に使っていたとなると私の恋人は少々腹黒い人物ということだろうか。
露骨に首を傾げる私に家康はふっと小さく笑った。
家康「あいつは何も考えてない。
『ちょっと聞いてこい』って言われて、あのまんま標的に近づいて、さらっと情報を聞き出すだけだ。
『私が聞いたら素直にお話してくださいました』とか普通に言うし、本人はなんで相手が素直に話したのか自覚していない」
「わあ…三成君っぽい」
ニコニコしながら報告する姿を想像すると胸が温かい。傷心でも愛しいと感じるのは三成君をまだ愛している証拠だ。
傷がついて引き攣った心は、愛しくて苦い気持ちを持て余し消化不良をおこしている。
家康「もう1つは人命救助の時だ。
多分舞が目撃したのはこれに該当すると思う」
「抱擁とお姫様抱っこと連れ込みが人命救助?
ふーん……」
卑屈っぽく呟いたら逆に家康様に聞き返された。
家康「お姫様抱っこって何?」
「お姫様だっこは、横抱きって言えばわかるかな」
お姫様抱っこのゼスチャーをして見せると、家康様はああと小さく頷いた。
家康「なんでそれをお姫様だっこって言うの?」
「南蛮の物語だと王子様がお姫様を助ける時に横抱きにする場面が多いの。
だからそう言われてるのかも…?」
曖昧な説明に申し訳ない気分でいると、家康様はまたひとつ首を傾げた。