第34章 呪いの器(三成君)
「家康様っ、私達、もうだめかも……しれない」
家康「俺はあんたと駄目になるような関係じゃない」
「え……そ、そうじゃなくてっ、こんな時にからかわないでください!」
絶望の告白を揶揄われて拍子抜けしてしまった。
(このタイミングで冗談を言うかな、ふつう!?)
嗚咽を堪えていた口元からハッと小さな笑いがこぼれ、下ばっかり見ていた目はパチパチと瞬きを繰り返して上向いた。
家康「あんたは安土に来て間もないんだから友達だって少ないでしょ。
聞いてあげるから話して。話したくないなら別にいいけど」
1度拒んだ救いの手がもう一度私に差し出された。
『弱そう』なんて言われて第一印象最悪だったのに、今夜はとても優しい。
からかってきたのも私のガス抜きのためだっただろうし、意外にも相手の気持ちを押して引く加減が絶妙すぎる。
「若い頃からたぬきだったんですね」
徳川家康がたぬき親父と呼ばれるのはまだまだ先のことなのに、つい口が滑った。
家康「は?」
「なんでもないです。それよりも実は………」
不意に現れた相談役はとても聞き上手で、見たこと感じたこと、汚い嫉妬心まで話してしまった。
事情を聞いた家康様が出した答えは、
家康「多分それ、浮気じゃない」
だった。
(もしかして気持ちがないなら浮気じゃないって言わないよね)
いかにも浮気の言い訳に使いそうな文言だ。一夫多妻が認められている戦国時代で通用するとしても私は絶対許さない。
冷たい視線を投げると家康様は冷静に受け流した。
家康「こういう言い方をすると嫌な気持ちにさせるかもしれないけど、三成との付き合いは俺の方が長い。
三成がどういう人間かそれなりにわかってる」
「仲良くないのに…?」
家康「こういう時に好き嫌いは関係ない。人間は身の回りに居る人間を無意識に見ているものだから。
それで話を戻すけど三成が進んで女に関わる場合は3通りの理由がある」
「3通り?」
意外と多いなと思いつつ、なんだろうかと考えてみた。