第34章 呪いの器(三成君)
(う、あの徳川家康に心配されてる)
家康様が悪戯に追求しているんじゃないとわかっている。
けれど他人に乱れた胸の内を晒すのは、とても勇気がいることだった。
聞いて欲しい気持ち以上に、浮気された惨めな自分を知られたくない。そんな気持ちが強くはたらいて家康様を拒んだ。
「何も…ありませんでした」
そう言うと家康様が呆れたように肩を落とした。
家康「頑固物だね」
「家康様ほどじゃありません」
家康「よく言うよね。
まあいい。酒を用意させている。身体が温まると思うから少し飲んで」
「ありがとうございます」
あっさりとひいてくれて助かったけれど、これで頼る手がなくなったと落ち込みもした。
打ち明けなかったのは自分なのに。
今夜ほど強がりな性格を残念に思ったことはない。
(身体が温まったら三成君の御殿じゃなくてお城に送ってもらおうかな)
『なんで三成の御殿に帰らないの?』って言われるだろうなと考えながら、お酒の入った杯を傾けた。