第20章 心配症
「悟…」
「ん?」
髪を洗っていた悟がこちらへと振り返る。
「あ!まって!こち見ないで!」
その私の言葉に「えー、何でよー」とぶすくれた声を出す悟は、そのまま頭からシャワーを浴びている。
というか…悟は恥ずかしくないのかな。まぁ全然恥ずかしく無さそうだけど…やっぱ悟ってそういうことに慣れてるだろうから…平気なのかも。
そう思いながらも、そんな考えを消すようにしてブンブンと頭を横に振った。ダメダメ、そんな事気にしたら。悟の過去とか慣れてるとか、そんなの私が気にする事じゃない。
「悟洗い終わった…?」
ドアの隙間からそう聞けば「んー、今ちょうど終わったよ」と浴室から聞こえてくる。
「じゃあ湯船先に浸かってて!それで目つぶってて!」
「え?目つぶるの?何で?」
「恥ずかしいから」
「でも僕つぶっても意味ないかもよ?」
確かに!そうだった!
「じゃあ後ろ向いてて!」
この家のお風呂はやたらと広いから、いくら背の高い悟でも余裕で好きな体勢くらいにはなれるはず。
「え〜」と文句を言いながらも後ろを向く悟に「すぐだから!洗い終わるまでだから!」と言って浴室へ入ると、急いで全身を洗った。
「ねーリン、まだぁ?」
「もう少し!もう終わる!」
慌てて身体と髪を洗うと、そのまま悟の入っている浴槽へと近づきそっとお湯へと脚をつける。
ざぶざぶっと小さな波を立てて肩までつかると、悟に背を向けて「いいよ…」と小さく声をかけた。