第20章 心配症
車から降りる時、もう全然普通に歩ける私を悟はヒョイっと軽々と抱き上げたまま歩き出す。
そんな私達を見て、補助監督の山田さんは恐ろしい物でも見たかのように目を見開いていた。
「悟!私全然もう歩ける!何処も痛くない!」と何度言っても悟は離してくれなくて、私を抱き抱えたままマンションのエントランスに入った。
マンションコンシェルジュさんはそんな私達に表情一つ変える事なく、いつも通り「おかえりなさいませ」と声をかける。さすがプロだ。
エレベーターが付き、私を抱えたままの悟はそのまま私の部屋ではなく当然のように自分の部屋のドアを開けて中へと入って行く。
「今日は僕の部屋に泊まってね」
白の目隠し越しにニッコリと微笑む悟は、そのまま靴を脱ぐと片手で器用に私の靴も脱がせてから部屋へと上がった。
「じゃあリン、服とか血だらけだし先にお風呂入っちゃおうか」
「あ、うん。そうだね」
言われるがままそう頷くと、悟は脱衣所に入るとやっと私を下ろしてくれた。
悟ってすごく心配症なのかもな。というよりも過保護なのかな?
とりあえず血のついた黒の上着を脱ぎ、Tシャツも脱ごうとしたところで私はピタリと手を止める。
「あの、悟…出ないの?」
私の隣では未だにこっちを向いてニコニコと立っている悟の姿。
「ん?気にしないで脱いで良いよ?僕も一緒にお風呂入るから」
その当たり前のように言われた言葉に、私は一瞬動きを止めたあと、ギョッと目を見開き悟を見上げた。
「え?悟も入るの?一緒に!?」
「うん、そうだよ〜だってリンの身体に傷がないかチェックしないと」
「でもそれは…硝子がやってくれたよ?」
そんな私の言葉に気にする様子もなく、悟は目隠しを慣れた手つきで外していき碧色の瞳が私を見つめると、そのまま上着も脱ぎ捨てる。