第20章 心配症
「そうか、まぁこの程度で済んで良かった」
「うん、ありがとう」
「それにしても五条、お前が反転術式で、リンの傷を治せば良かったんじゃないか?他の奴には一切出来ないくせに、何故かリンには使えるんだから」
白衣のポケットへ手を入れる硝子が悟を見下ろす。
そう。悟は何故か私にだけ反転術式で傷を治すことが出来る。
高専2年のあの時から、何度他者に試しても他の人の傷は絶対に治せないのに。
自分と、私の傷は治す事が出来るのだ。
何故私だけ治せるのか…その謎は未だに分かっていないけど…きっと何か理由があるのかもしれない。
そういえば傑は愛のパワーとか言ってたっけ…
「あぁ、それも一瞬考えたんだけどね。もうリンに8年以上は僕の反転術式使ってなかったし、硝子の方が確実だと思ったんだよ」
少し考え込むようにしてそう呟いた悟は、そっと私の手を握った。
「へぇー、あの五条が自分の力に不安を覚えたってわけだ。そんな事もあるんだな」
「そりゃあ僕のせいでリンに何かあったら、それこそ自分を呪い殺したくなるからね」
ははっと空笑をした悟は、私の手にぎゅっと力を込めると、私を見上げる。
「リン…無事で良かった」
悟のその声は少し震えていて、心配をかけてしまった事を申し訳なく思う。
「悟、心配かけてごめんね…」
そんな私に悟は小さく微笑むと、優しくぎゅっと抱きしめ…耳元に顔を近づけ呟いた。
「でも…さっき、起きた時僕のことうるさいって言ってた…よね?」
「……………」
「僕すっごく心配してたのに…うるさいって言ってたよね?」
「ご、ごめん…ね?」
どうやらあの時の無意識の言葉、聞こえていたらしい…