第20章 心配症
「お疲れ様です。影千佳さん」
乗り込んだ車の運転席に座っていたのは伊地知君。あれ?送ってくれた補助さんといつの間にか交代したんだ。
「お疲れ様、伊地知君」
そう思いながら隣の椅子へ刀をカチャッと置くと。そんな私をミラー越しに見ていた伊地知君がギョッと目を見開いた。
「影千佳さん!出血が凄いですよ!!」
「ん?あぁこれね、でも出血ほど傷口は対した事ないから大丈夫だよ」
あはははっと笑いながらゴシゴシと額を擦ると、伊地知君は焦ったように「すぐに病院へ直行します!!」と言って車を発進させる。
「あーこれ、病院じゃダメかもなんだぁ。かなり強い呪いのこもった瓦礫にぶつかったから血が抑えてても止まらないんだよね。硝子に治してもらった方が良さそう」
「分かりました!ではすぐに家入さんへ連絡を。そのまま高専へ向かいます」
「ごめんね、ありがとう」
私はソファーへ深く座ると、もう一度出血を袖で拭き取ってから目を閉じた。あー、何か少し頭クラクラしてきたかも。血…出すぎてるのかなぁ
痛みはそんなにないから、傷は深くないはずだけどなぁ。あの呪霊…久々にやってくれたなぁ。そんな事を考えながら、ぼーっとしていると15分ほどで高専へと着き伊地知君が急いでドアを開けてくれる。
「大丈夫ですか!?立てますか?」
「うん、平気だよぉ。本当見た目ほど対した事ないから」
車から降りると、丁度伊地知君の携帯が鳴り伊地知君は携帯を見てから困ったように私を見つめる。
「心配しないで本当に平気だから、一人で行けるよ。だから電話出て」
そう笑いながら言う私に、彼は「すみません、電話が済みましたらすぐに追いかけるので!」と言うと、急いでスマホを耳に当てた。
私はそのまま歩き出し石畳の階段を登る。あーどうしてここってこんなに広いんだろう。入り口から建物まで遠すぎない…?
あー、ヤバイ。本格的に頭クラクラしてきた。歩いたせいかな…
伊地知君が見えなくなったのを確認してから、一度休憩をしようかな…なんて考えてえてた所で。
目に垂れ流していた血が入り込み、目を瞑った瞬間。グラっと視界が歪んでふらりと脚の力が抜けていく。「倒れそう…」冷静にそんな事を思う。