第19章 長年の気持ち
その瞬間、目の前で目を見開いた悟の綺麗な瞳から一粒の涙がこぼれ落ちた。
「…それ、本当…?」
「うん、本当だよ。悟が大好きだよ」
「嘘じゃ…ないよね、だって…夢みたいだ」
「嘘じゃないし夢じゃないよ、だってほら。こんなに温かい」
私は零れ落ちた悟の涙を掬い上げると、そのままそっと頬へと触れた。
私を見下ろす悟は、顔を歪ませ涙をこらえるようにして眉間に皺を寄せると…私を強く強く抱きしめた。
「…リン」
「うん、悟」
「…ッリン…リン」
まるで私のことを確認するみたいに、何度も名前を呼んでくれる悟が、私を強く抱きしめてくれる悟が…愛しい。
悟の背中に回していた腕を私もぎゅっと握り締めると、そのままゆっくりと口を開いた。
「…悟、私と付き合って下さい」
そう言った言葉に、しばらくしても悟からの返事はなくて…
そっと身体を離し悟を見上げれば。
その表情は驚いた顔をした後「ははっ」といって目を細め優しく笑う。
「それ、僕の台詞なのに」
クスクスと笑う悟の表情は、とても嬉しそうで、そんな彼を見て私も嬉しくなる。
「好きだって言ってくれたのは悟が先だったから、これは私が先に言いたかったんだ」
「…リンって意外と昔から急に男前な時あるよね。ほら任務中とか、あとはいきなり僕を蹴り飛ばすところとか。まぁそんなところも好きなんだけど」
目の前の悟は少し意地悪そうに笑ってみせる。
蹴ったのは…確かに…
しかも私って、任務中男前なんだ。
そんな事を思いながらも、悟がサラッと言った好きと言う言葉にまた赤面する。
「それより!返事は?お付き合いの返事!」
私は真っ赤に染まった顔を誤魔化すようにして、ズイッと背伸びをして悟へと顔を近づけた。