第10章 雪の夜
「私がおりますのに、女性と手を繋ぐのはどうかと」
冷静にこちらを見てくる女性は、ニコリと綺麗に微笑む。だけど悟はそんな彼女に対して。
「殺されたくなかったら、これ以上喋るな」
ころッ…婚約者さんに…殺すって…
とんでもなく驚いた表情で悟を見上げると、悟は「アホズラしてんな」と口パクで言ってくる。
「あと、オマエは俺の婚約者じゃねェ。キメェから二度と俺の前に現れんなよ」
私の手をグイッと引っ張り歩き出した悟は、そのまま彼女から離れるようにして早足で歩くと、長い長い廊下を進んだ。
「…悟さん、さっきのは言い過ぎなのでは…」
元々悟の口が悪いのは百も承知だ。でも女性にあんな言い方は…さすがに傷付けてしまったのでは…
「あんなクソ女どうでも良いんだよ。名前すら覚えてねェわ」
雑にそう話した悟は、一つのドアの前で足を止めると「入れ」と言って、私をその中へと押し込んだ。